會田祥 フリークライマーになれ~城ヶ崎・パープルシャドウ〜/ Sho Aita, Become a free climber ~”Purple shadow” in Jogasaki~

2022年1月。クラッククライミングのメッカである城ケ崎海岸で波の音の中、黙々と岩の隙間と対話するように登るクライマーがいた。
彼の名は會田祥。

會田祥はパラクライミング視覚障害B1(全盲)で戦う選手だ。11歳から弱視が進み、17歳からはほとんど見えていないという。2年に一度行われているパラクライミング世界選手権では2012年以降これまですべての大会で金メダルに輝いてきた。日本を代表するブラインドクライマーだ。

そんな會田は近年、コーチの田中星司(アストラクライミング)のアドバイスによりクラッククライミングに挑戦をしている。驚くべきことに「サイトガイド」なしで行うのだという。

通常、パラクライミング視覚障害の競技では「サイトガイド」と呼ばれる補助者に次に掴むべきホールドを教えてもらいながら登る。当然、見えていない中でのクライミングは「サイトガイド」指示の下でも相当な技術を要する。

だが會田はこのクラッククライミングを、コーチである田中との入念なリハーサルを行ったうえで、ガイド無しで一人岩と対話をするように登っていくのだった。

この日、會田は城ケ崎海岸フナムシロックエリアにあるパープルシャドウをリード(マスター※)で完登した。

この夏にワールドカップも控えている會田だが、外岩でも、また競技においても益々活躍が期待される。
文:宮澤 響(みやざわひびき)

會田祥(あいた・しょう)
1996年、山梨県出身。パラクライミング日本代表。10歳のころ視覚障害向けのクライミングスクールでクライミングをはじめる。2011年に行われたパラクライミング日本選手権より選手としてのキャリアをスタートさせ、パラクライミング世界選手権では2021年ロシア・モスクワ大会も含め過去5回出場したすべての大会で金メダルに輝いている※1。また、2022年夏頃に開催予定のワールドカップでも表彰台が期待されている。現在はクライマーとしての可能性を広げるためクラッククライミングなど新たなクライミング分野にも挑戦している。

※2012年(フランス・パリ)、2014年(スペイン・ヒホン)、2016年(フランス・パリ)2019年(フランス・ブリアンソン)ではB2(強度弱視)クラスで優勝。2022年(ロシア・モスクワ)ではB1(全盲)クラスで優勝。


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